配当と株主優待、結局どっちが得?利回りだけで判断しない考え方

株式投資では、配当金を重視する人もいれば、株主優待を楽しみにしている人もいます。「できるだけ高い配当をもらいたい」「株主優待で外食や買い物を楽しみたい」——どちらも株式投資の魅力のひとつです。
では、配当利回りを重視する投資と、株主優待を重視する投資では、どちらが得なのでしょうか。
単純に考えれば、年間で多くの現金を受け取れる配当のほうが分かりやすく、優待は「おまけ」のようにも見えます。しかし、実際に投資を続けていくと、必ずしもそうとは言い切れません。
この記事では、配当利回り重視と株主優待重視の違いを、金銭的な価値だけでなく、資産形成、使いやすさ、リスク、投資を続ける楽しさという視点から考えてみます。
株主優待を実施している企業はどのくらいある?
野村インベスター・リレーションズの調査によると、株主優待制度を導入している企業は2025年3月末時点で1,580社、全上場企業の35.0%にあたります。これは2019年9月末(1,532社・37.2%)以来、6年ぶりの高水準です。
さらに大和インベスター・リレーションズの調査では、2025年9月時点で優待実施企業は1,624社(前年から135社増)、実施率は41.2%まで伸びています。新NISAの開始や政策保有株の解消、東証の上場維持基準の経過措置終了などを背景に、個人株主を増やす狙いで優待を新設・再開する企業が増えているためです。
| 業種 | 優待の傾向 |
|---|---|
| 外食・食品・小売 | 自社商品やサービスを直接提供しやすく、実施率が高い |
| 鉄道・航空・レジャー | 乗車券や施設利用券などを提供 |
| 通信・動画配信 | サービス利用料やポイントを提供 |
| 金融・その他 | QUOカードなどの金券・電子ギフトが中心 |
出典:野村インベスター・リレーションズ「株主優待実施レポート」(2025年4月9日)、大和インベスター・リレーションズ「株主優待の最新トレンド」(2026年1月版)
配当を実施している企業のほうが多い
一方、配当を実施している企業は、株主優待を実施している企業よりも数が多いことが分かっています。優待はあくまで「実施できる企業が任意で行う制度」であるのに対し、配当は業績が黒字の企業であれば実施のハードルが比較的低いためです。
データについての注記
配当実施企業の正確な割合については調査時点や集計方法によって数値に幅があり、本記事では特定の年の数値を断定的には示していません。「配当実施企業のほうが優待実施企業より多い」という傾向として捉えてください。
また、SBI岡三アセットマネジメントの市場レポートによると、2025年度の国内上場企業の配当総額は26.4兆円と5年連続で増加し、配当性向(利益のうちどの程度を配当に回すか)は38%前後で前年度から小幅に上昇しました。配当総額と自社株買いを合わせた株主還元総額は44.6兆円と過去最高を更新しています。
出典:SBI岡三アセットマネジメント「マーケットレポート」(QUICKデータ集計、2025年度実績・2026年度予想を含む)
配当と株主優待は何が違う?
配当と株主優待は、どちらも株主への利益還元ですが、株主が受け取るものには大きな違いがあります。
| 比較項目 | 配当 | 株主優待 |
|---|---|---|
| 還元されるもの | 現金 | 商品・食事券・割引券など |
| 実施企業 | 多い | 配当より少ない |
| 使い道 | 基本的に自由 | 利用先や期限に制限がある |
| 金額の比較 | しやすい | 人によって価値が変わる |
| 資産形成との相性 | 高い(再投資できる) | 使い切ることが前提 |
| 主なリスク | 減配・無配 | 廃止・改悪 |
| 管理の手間 | 少ない | 優待内容によって異なる |
配当は「現金」であるのに対して、株主優待は「使い道が限定された還元」である——この違いが、配当派と優待派の考え方を大きく分けます。
企業はなぜ配当を出すのか
配当は株主が保有している株数に応じて支払われるためシンプルです。例えば1株あたり50円の配当なら、100株保有で5,000円、1,000株保有で5万円です。受け取った配当金は、生活費に使う、貯金する、別の株を買う、同じ銘柄を買い増すなど、自由に選べます。この使い道の自由度こそ、配当の大きな魅力です。
企業はなぜ株主優待を実施するのか
株主優待は、個人株主を増やし長期保有してもらう、自社商品やサービスを知ってもらう、企業のファンになってもらうといった狙いで実施されます。特に自社の商品やサービスを優待にできる企業にとっては、優待そのものが販売促進や企業PRにもなります。つまり株主優待は「株主への還元」であると同時に「企業を知ってもらうためのマーケティング」という側面も持っています。
「優待より配当」という企業の動き
近年は、株主優待の一部を廃止・縮小する一方で配当を充実させる企業もあります。例えばU-NEXT HOLDINGS(旧USEN-NEXT HOLDINGS)は、2022年12月に株主優待「プレミアム優待倶楽部」のポイント制度を変更・廃止する一方、2019年8月期以降は継続的な増配を行ってきました。なお、動画配信サービス「U-NEXT」の視聴料などを提供する優待自体は現在も継続しています。優待を利用できない機関投資家などから配当の充実を求める声があることも、こうした動きの背景のひとつです。
見落としがちなリスク:優待の「廃止・改悪」、配当の「減配」
株主優待投資で忘れてはいけないのが、優待制度は将来も続くとは限らないということです。TSRデータインサイトの調査によると、2025年に株主優待の導入(再導入を含む)を発表した上場企業は175社だった一方、廃止を発表した企業も68社ありました(上場廃止に伴う優待終了を除くと、継続企業に限った優待廃止は30社)。
優待そのものの廃止に至らなくても、優待金額の減額、必要株数の引き上げ、長期保有条件の追加、利用できる店舗の削減、有効期限の短縮といった「改悪」が行われる可能性もあります。「毎年3,000円分の優待がもらえるから実質利回り5%」と考えて投資しても、優待が廃止されれば計算は大きく変わってしまいます。
出典:TSRデータインサイト「2025年全上場企業『株主優待』導入・廃止動向調査」
もちろん、配当にも「減配・無配」というリスクがあります。特に「配当利回りが高い」という理由だけで銘柄を選ぶ場合は注意が必要です。例えば株価1,000円・年間配当50円なら配当利回りは5%ですが、業績悪化で株価が500円まで下落すると、過去の配当を基準にした利回りは10%に見えてしまいます。これは実態としては株価下落=業績への懸念が高まっているサインであることも多く、その後に減配されれば実際の利回りはさらに低下します。高配当株を選ぶ場合は、配当利回りだけでなく配当性向・業績・キャッシュフロー・過去の配当推移・財務状況なども確認することが重要です。
「配当利回り5%」と「優待利回り5%」は同じ価値なのか?
ここが、このテーマの重要なポイントです。数字だけを見れば、配当利回り5%も株主優待利回り5%も同じように見えます。しかし、実際の価値は同じとは限りません。
年間10万円投資して配当5%なら、単純計算で年間5,000円の現金です。この5,000円は自由に使い道を選べます。一方、年間5,000円相当の株主優待を受け取れるとしても、「その店を利用するのか」「近くに店舗があるのか」「有効期限までに使えるのか」「本当に欲しい商品なのか」によって、自分にとっての価値は変わります。つまり配当5,000円は基本的に5,000円の現金価値なのに対し、優待5,000円が自分にとって5,000円相当の価値があるとは限りません。
| 利用状況 | 自分にとっての価値 |
|---|---|
| 普段から利用している | 高い |
| 近くに店舗がある | 高め |
| たまに利用する | 中程度 |
| 利用する予定がない | 低い |
| 有効期限までに使えない | ほぼゼロ |
優待利回りは「額面」と「実質」を分けて考える
株主優待を比較するときは、企業が公表している額面だけで判断しないことが重要です。計算方法は次のとおりです。
- 配当利回り = 年間配当金 ÷ 投資金額 × 100
- 優待利回り = 年間優待価値 ÷ 投資金額 × 100
- 総合利回り = (年間配当金+年間優待価値) ÷ 投資金額 × 100
例えば投資金額30万円、年間配当9,000円、優待の額面6,000円だったとします。(9,000円+6,000円)÷30万円=5%となり、額面ベースの総合利回りは5%です。しかし6,000円分の優待のうち実際に利用できるのが4,000円分だったとすると、実質的な年間還元は9,000円+4,000円=13,000円。実質総合利回りは13,000円÷30万円=約4.33%まで下がります。企業が公表する「優待価値」と、自分にとっての「実質的な価値」は違うということを覚えておきましょう。
配当には「再投資」という強力な使い道がある
配当金の大きなメリットは、自由に使えることだけではありません。資産形成を重視する投資家にとっては、再投資できることも非常に重要です。年間10万円の配当を受け取った場合、その10万円をさらに株式や投資信託に投資し、再投資によって増えた資産からさらに配当や分配金を得られる——いわゆる複利の効果です。
一方、株主優待は基本的に商品やサービスとして受け取るため、そのまま投資元本に戻すことは通常できません。ただし、優待によって生活費が浮けば、その分を投資に回すことはできるので、間接的に資産形成へ貢献できる面もあります。直接的な再投資のしやすさでは、配当のほうが圧倒的に自由といえます。
NISAとの相性
NISA口座では、一定の投資枠内で株式の配当・売却益を非課税にできます。ただし、上場株式の配当金を非課税で受け取るには、証券会社での配当金受取方法を「株式数比例配分方式」に設定しておく必要があります(郵便振替や銀行振込などを選んでいると非課税の対象になりません)。一方、株主優待は現金配当とは制度上の位置づけが異なるため、配当と同じ非課税ルールがそのまま当てはまるわけではありません。「配当だからNISA」「優待だからNISA」と単純に考えず、受取方法や制度の仕組みを確認しておくことが大切です。
「幸せ度」で考える配当と優待の違い
株式投資は「お金を増やすこと」だけが目的とは限りません。投資を続ける楽しさや、生活が少し豊かになる感覚も大切です。配当と株主優待を「幸せ」という視点から比べてみます。
| 視点 | 配当重視 | 優待重視 |
|---|---|---|
| お金の自由度 | 高い | 低い |
| 資産形成・再投資との相性 | 高い | 限定的 |
| 受け取る楽しさ | 実感しにくい | 届く楽しみがある |
| 生活費の節約実感 | 間接的 | 直接的 |
| 家族との共有 | 間接的 | 直接活用しやすい |
| 企業とのつながり | 間接的 | 感じやすい |
| 利用時の手間 | 少ない | 店舗探し・期限管理などが必要 |
配当重視派の幸せを一言で表すなら「お金の使い道を自分で決められる自由」。優待重視派の幸せを一言で表すなら「投資の成果を生活の中で具体的に感じられる楽しさ」です。もちろんこれはあくまで一般的な傾向であり、配当に大きな喜びを感じる人もいれば、優待をそれほど重視しない人もいます。大切なのは、自分にとって何が投資の楽しさなのかです。
配当+優待という選択肢もある
配当と株主優待の両方を実施している企業を選ぶ方法もあります。例えば配当利回り3%+優待利回り2%=総合利回り5%の銘柄なら、配当3%は自由に使う・再投資し、優待2%は食事や買い物に使うといった使い分けができます。配当の自由度と優待の楽しさを両方取り入れたい人には魅力的な方法ですが、総合利回りが高いというだけで投資判断をしないよう注意しましょう。配当も優待も、企業の業績や財務状況、株主還元方針によって将来変わる可能性があります。
「利回りが高いから買う」には注意
配当株でも優待株でも、最も注意したいのが「利回りが高いから買う」という考え方です。高利回りの裏には、株価の大幅下落、業績悪化、一時的な利益増加、無理な水準の配当、優待制度の維持が難しくなっているといった理由が隠れている場合があります。「配当利回り5%だから買う」「優待込みで総合利回り7%だから買う」だけでは不十分で、重要なのは「なぜ、その利回りになっているのか」を考えることです。
配当派・優待派、それぞれ向いている人
配当派に向いている人
- お金の使い道を自由に決めたい人
- 資産形成を重視し、配当を再投資に回したい人
- 店舗やサービスを探したり有効期限を管理したりする手間をかけたくない人
- 将来的に配当収入を生活費に使いたい人(FIREやセミリタイアを目指す人など)
優待派に向いている人
- 普段から利用する企業がある人(額面に近い価値を受け取りやすい)
- 投資の成果を生活の中で具体的に感じたい人
- 家族で使える優待を探している人
- 投資を楽しみながら長く続けたい人
まとめ:結局、配当と株主優待はどちらが得なのか
「配当利回り派と株主優待派、どちらが得なのか」という問いに、単純な答えを出すことはできません。配当には「お金として受け取れる自由」があり、株主優待には「投資の成果を商品やサービスとして楽しめる魅力」があります。比較すべきなのは単純な「何%得か」だけではなく、「自分が実際にそれをどう使うのか」です。
- 資産形成や自由度を重視するなら、配当重視
- 生活の楽しさや節約効果を重視するなら、株主優待重視
- 両方欲しいなら、配当+優待の銘柄を組み合わせる
配当は「お金の自由」、株主優待は「投資を楽しむ幸せ」。どちらが優れているというより、自分が投資を通じてどんな生活を実現したいのかから逆算して選んでみてはいかがでしょうか。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
この記事が、あなたのこれからのキャリアや資産形成を考えるきっかけになれば幸いです!
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