デイトレ vs ほったらかし投資、結局どっちが得?相場局面別にシミュレーションしてみた

「デイトレとほったらかし投資、結局どちらが最終的な利益は大きくなるのか」という疑問について、Pythonで簡易的な価格シミュレーションを組んで比較してみました。前提を置いた上での試算なので絶対的な答えではありませんが、相場局面ごとの傾向をつかむ材料として見ていただければと思います。
シミュレーション①:デイトレの時間コストを含めない場合
前提の概要
・元本100万円/運用期間5年/譲渡益課税20.315%(利益確定時に課税)
・ほったらかし投資:最初に一括購入し、5年後に売却
・デイトレ:移動平均から一定以上乖離したタイミングで売買を繰り返す単純な逆張りルール(スリッページ往復0.2%相当を都度差し引き)
・相場局面は「上昇トレンド」「レンジ相場」「下降トレンド」「急落→回復」「急騰→反落」の5パターンで比較
(参考イメージ:①2003〜2007年ごろの相場/②2015〜2016年ごろの相場/③2000〜2003年ごろの相場/④2020年のコロナショック/⑤2013年のアベノミクス初期相場。値動きの傾向が近いという参考例であり、当時の相場を再現したものではありません)

考察
まず目を引くのは上昇トレンドでの差です(2003〜2007年ごろの相場に近いイメージ)。ほったらかし投資が295万円まで伸びたのに対し、デイトレは119万円にとどまりました。上昇局面では、逆張りロジックが「価格が上がったから」という理由で早めに利益確定してしまい、その後の値上がりを取りこぼす結果になっています。上昇トレンドという局面そのものが、頻繁な売買とは相性が良くない可能性がある、という見方ができそうです。
一方、レンジ相場(横ばいで上下する相場)(2015〜2016年ごろの相場に近いイメージ)では、デイトレが126万円、ほったらかしが99万円という結果になりました。上下動を都度拾って利益に変えられる分、含み益のまま動かないほったらかし投資よりも効率よく利益を積み上げられています。相場が方向感なく上下している局面は、売買を繰り返す戦略の強みが出やすい場面と言えそうです。
下降トレンド(2000〜2003年ごろのITバブル崩壊局面に近いイメージ)では、デイトレが67万円、ほったらかしが52万円と、こちらもデイトレがやや優位でした。下落局面でも短期的な反発を捉えて利益確定できるため、下げ相場を最後まで保有し続けるほったらかし投資よりダメージを抑えられた形です。ただしこれは今回のロジックがうまく機能した結果であり、逆張りが下げに巻き込まれるケースも当然想定されます。
急落→回復(2020年のコロナショックに近いイメージ)・急騰→反落(2013年のアベノミクス初期相場に近いイメージ)のような急な値動きを含む局面では、デイトレがやや有利(急落型)、あるいはほぼ互角(急騰型)という結果になりました。急な値動きは「たまたま良いタイミングで売買できたかどうか」に結果が左右されやすく、ロジックや相場のタイミング次第で優劣が入れ替わりやすい局面だと考えられます。
時間コストを考慮しない場合、相場局面によってはデイトレの方が最終利益で上回るケースも複数見られる、というのがここまでの結果です。
時間コストを含めると景色が一変する
追加の前提
・デイトレには売買の監視・執行に1日あたり1時間を要すると仮定
・その時間の価値を時給2,000円として金額換算(5年間・年間252営業日で計算すると合計約252万円相当)
・この時間コストを、デイトレの税引後利益からそのまま差し引いて比較


考察
図1では局面によってデイトレが上回るケースも見られましたが、時間コストを加味した図2(元本100万円)では、5つの局面すべてでほったらかし投資が上回る結果になりました。レンジ相場や下降トレンドのようにデイトレの売買ロジックが機能していた局面でも、そこで得られた差(数十万円規模)は、監視や執行に費やした時間の価値(約252万円)によって容易に相殺されてしまう計算です。
ここで気になるのが、「投資額そのものを増やしたらどうなるか」という点です。時間コスト(約252万円)は投資額の大小に関わらず一定である一方、売買によって生まれる利益の差は投資額に比例して大きくなります。そこで元本を500万円に増やして同じ条件で試算したのが図3です。
図3を見ると、レンジ相場や下降トレンド、急落からの回復局面では、デイトレと買&HOLDの差(時間コストを含めない場合)が5倍に拡大しており、時間コスト(約252万円)の相対的な重みは図2のときより小さくなっています。とはいえ、それでも5つの局面すべてで、時間コストを含めたデイトレはほったらかし投資を下回る結果になりました。投資額を500万円まで増やしても、まだ「時間コストを吸収しきれるほどの差」には届かない、というのが実態です。
ちなみに、今回のレンジ相場のロジックの場合、時間コストを含めたデイトレがほったらかし投資を上回るには、元本がおおよそ900万円台まで必要になる計算です(下降トレンドや急落局面ではさらに1,300万〜1,700万円程度が必要)。つまり、投資額を増やせばいずれ差が埋まる可能性はあるものの、非専業の個人投資家が用意できる金額としては、かなりまとまった資金が前提になってくる、という点は押さえておきたいところです。
これは「デイトレの売買判断が優れているかどうか」という話とは別の論点です。仮に売買のロジックや相場観が的確で、raw(税引き前)の運用成績自体はデイトレの方が良かったとしても、そこに投じた時間を他の収入(本業・副業など)に充てられていた場合の価値まで含めて比較すると、結果が変わってくる、ということを示しています。
まとめ
今回のシミュレーションから見えてきたのは、次のような整理です。
- 相場局面ごとに見ると、レンジ相場や下降トレンドなど、デイトレの売買ロジックが有利に働く局面は確かに存在する
- 一方で上昇トレンドのように、頻繁な売買がかえって利益の伸びしろを取りこぼしてしまう局面もある
- 譲渡益課税は利益確定のたびに発生するため、売買を繰り返すほど課税のタイミングも増え、ほったらかし投資が持つ「売却するまで課税されない」という繰延効果の恩恵は受けにくくなる
- そして最も結果を左右したのは、相場局面の差よりも「デイトレに費やした時間をどう評価するか」という点だった
- 投資額を増やせば時間コストの相対的な重みは薄れていくが、今回の試算では500万円程度ではまだ差が埋まらず、局面によっては1,000万円を超える資金規模が必要になる計算だった
デイトレそのものが不利、ほったらかし投資が絶対的に優れている、という単純な話ではなく、どちらの手法にもそれぞれの得意な局面とコスト構造がある、というのが今回の試算からの実感です。その上で、非専業の個人投資家にとっては、売買にかける時間そのものが機会費用としてどれだけの重みを持つか、という視点も含めて手法を選ぶ価値がありそうです。
シミュレーションの前提条件(詳細)
以下は今回のシミュレーションで用いた具体的な前提条件です。数値を変えれば結果も変化するため、あくまで一つの試算例としてご覧ください。
共通の前提
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| 初期投資額 | 100万円、500万円 |
| 運用期間 | 5年間(営業日ベース年252日、合計1,260日) |
| 譲渡益課税 | 20.315%(特定口座・源泉徴収ありを想定、利益が出た年の実現益に対して課税) |
| デイトレのスリッページ・スプレッド | 売買1回あたり0.1%(往復0.2%相当)を価格に反映 |
| デイトレの売買ロジック | 直近20日移動平均から±2%乖離した時点で逆張り売買(平均回帰戦略) |
※本シミュレーションは、あくまで日足データをベースにした簡易モデルです。実際のデイトレは1分足・3分足やVWAPからの乖離を見て判断することが多く、日足20日移動平均はそれを日次データで擬似的に再現するための計算上の便宜的な代用です。またスリッページ0.1%は、手数料無料の証券会社を使う場合でもスプレッドや約定価格のズレは残ることを踏まえ、やや余裕を持たせた前提としています。さらに税金についても、各年の実現損益を集計した上で運用期間終了時にまとめて差し引く簡易的な計算方法を採っており、実際の特定口座のように都度税金分を差し引いて翌年の再投資元本に反映する形までは再現していません。これらはいずれも計算を簡略化するための前提であり、実際の値動きや口座の課税タイミングとは異なる点にご留意ください。
①上昇トレンドの前提
年率換算でおおよそ+15%程度の緩やかな上昇ドリフトを持つ価格変動(日次ボラティリティ約1.0%)としてランダムウォークを生成しています。
参考イメージ:2003年〜2007年ごろの日経平均。バブル崩壊後の最安値(2003年4月・7,607円)から、2007年の高値(18,261円)まで、約4年をかけて緩やかに上昇し続けた局面が近いイメージです。
②レンジ相場(横ばい・上下)の前提
特定の水準を中心に価格が上下に戻ろうとする平均回帰型のプロセス(オルンシュタイン・ウーレンベック過程)で生成。トレンドは持たず、一定の範囲内で上下動を繰り返す値動きを想定しています。
参考イメージ:2015年〜2016年ごろの日経平均。チャイナショックやBrexitなどを挟みながらも、おおむね17,000円〜21,000円程度のレンジで上下を繰り返していた局面が近いイメージです。
③下降トレンドの前提
①と対称的に、年率換算でおおよそ-15%程度の下落ドリフトを持つランダムウォークとして生成しています。
参考イメージ:2000年〜2003年ごろの日経平均。ITバブル崩壊の影響で、2万円台から2003年4月の7,607円まで、複数年にわたって下落基調が続いた局面が近いイメージです。
④急落→その後回復の前提
緩やかな上昇トレンドの途中(運用期間のちょうど中間地点)で、1日で-30%という急落イベントを発生させ、その後は緩やかな上昇基調に戻る値動きとして生成しています。
参考イメージ:2020年のコロナショック。約1か月の間に約3割下落した後、各国の金融緩和策を背景に比較的短期間でV字回復した局面が近いイメージです。
⑤急騰→その後反落の前提
横ばい基調の値動きの中で、運用期間の40%地点で+30%の急騰イベントを発生させ、その後約40営業日かけて上昇分を段階的に吐き出す(反落する)値動きとして生成しています。
参考イメージ:2013年のアベノミクス相場初期。2012年11月から2013年5月にかけて半年ほどで日経平均が約8割上昇した後、いわゆる「バーナンキ・ショック」をきっかけに急落した局面が近いイメージです。
時間コストの前提(図2、図3)
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| デイトレに要する時間 | 1日あたり1時間(監視・発注などを含む) |
| 時間の価値(時給換算) | 2,000円/時間 |
| 5年間の合計機会費用 | 約252万円(1時間×252営業日×5年×2,000円) |
※本シミュレーションは特定の売買ロジック・パラメータに基づく一つの試算であり、実際の相場や個々の投資スキルによって結果は変動します。デイトレの手法や熟練度、時間の使い方の価値観は人によって異なるため、あくまで判断材料の一つとしてご参照ください。
各局面の実現年率(CAGR)
各局面の価格変動は乱数によって生成しているため、前提としたドリフト(平均的な方向性)と、実際にシミュレーション上で実現した年率(CAGR)は必ずしも一致しません。今回の試算で実際に生成された値は以下の通りです。
| 局面 | 入力ドリフト(想定) | 実現CAGR(結果) |
|---|---|---|
| ①上昇トレンド | 年率+15%程度 | +28.1% |
| ②レンジ相場 | トレンドなし | -0.2% |
| ③下降トレンド | 年率-15%程度 | -12.2% |
| ④急落→回復 | (イベント型) | -8.6% |
| ⑤急騰→反落 | (イベント型) | -10.3% |
①の実現CAGR(+28.1%)はやや強気寄りの数値ですが、実在の相場で見るとS&P500の1990年代後半(1995〜1999年ごろ)や、日経平均のバブル経済期(1980年代後半)のような「特定の強気相場の渦中」であれば実際に起きていた水準です。全世界株式やS&P500の長期平均(年率7〜10%程度)というよりは、稀に発生する強気相場の一例として捉えるのが実態に近いといえます。
※本シミュレーションは特定の売買ロジック・パラメータに基づく一つの試算であり、実際の相場や個々の投資スキルによって結果は変動します。デイトレの手法や熟練度、時間の使い方の価値観は人によって異なるため、あくまで判断材料の一つとしてご参照ください。
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